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『画家の詩、詩人の絵』 [その他詩集]

不可知の領域を感じ取る――藪下明博

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画家にとっての詩とは何か?
詩人にとっての絵とは何か?

本書のテーマは、この両者において本質的かつ根源的な詩情=詩精神の有り様について、読者に(特に詩人に対して)一石を投じたものと言えよう。
画家の描いた絵と詩、詩人の書いた詩と絵を並列し、300頁以上にも及ぶ詩画集として纏めている。

実に美しい装幀である。

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『画家の詩、詩人の絵』
企画・監修/土方明司・江尻潔
監修/木本文平
(株式会社青幻舎・2015年10月10日・3,000円+税)

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魔術的現代詩⑯『アンドレ・ブルトンの詩的世界』 [魔術的現代詩]

痙攣的な「詩」世界の探求――藪下明博

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久しぶりにアンドレ・ブルトンに関する纏まった論考が上梓された。
詩人・朝吹亮二氏が三十年にわたり書き留めた、詩論・エッセー・研究ノート等を一冊にしたものである。
二部構成となっており、Ⅰ部には研究論文八本を、Ⅱ部にはエッセー六篇が収録されている。

     *

『アンドレ・ブルトンの詩的世界』
朝吹亮二
(慶應義塾大学法学研究会・2015年10月30日・四九〇〇円+税)


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魔術的現代詩⑮『樹下』 [魔術的現代詩]

樹への想い――孤高ゆえの誇り――藪下明博


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目薬の木というものがあるらしい。
カエデ科の落葉樹で、日本にだけ自生する雌雄異株の珍しい植物だとも。
その名の通り、樹皮や葉の煎じ汁で目を洗うと、眼病によく効くと伝えられている。
別名「千里眼の木」、「ミツバハナ」、「長者の木」などと呼ばれている……(この樹皮の粉は/目の病に効く)。


『樹下』
安藤元雄
(書肆山田・2015年9月5日・二四〇〇円+税)

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魔術的現代詩⑭『川・海・魚等に関する個人的な省察』 [魔術的現代詩]

釣竿を持つソクラテス――藪下明博

 
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タイトルを見て、小笠原鳥類氏の『素晴らしい海岸生物の観察』をふと思い起こした。
いや、ただ思い起こしただけで他意はない。
海・生物・観察といったキーワードが重なり、何となくそれが脳裏を掠めたのであろう。

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『川・海・魚等に関する個人的な省察』
八木幹夫
(砂子屋書房・2015年6月1日・2,000円+税)

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『ろまねすく』 [書評]

出口裕弘氏の訃報を聞いた。
86歳だったという。
ユイスマンスの『大伽藍』は、生涯忘れることが出来ない一書である。
小説家としての氏は、地味でありながら、深い味わいの作品を残した。
常に、詩人の魂を有していた。

ご冥福をお祈りする。


何もできないので、過去に書いた書評を再録する。



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『ろまねすく』
出口裕弘
(1990年3月10日・福武書店・1,400円)




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『澁澤龍彦の手紙』 [書評]

もう一つ。


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『澁澤龍彦の手紙』
出口裕弘
(朝日新聞社・1997年6月1日・2,000円+税)


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『バス停に立ち宇宙船を待つ』 [その他詩集]

孤独を感じる詩――藪下明博



昔、友部正人と友川かずきを混同していた時期があった。
……なんて、冒頭から笑えない冗談で申し訳ないが、同じ「友」という苗字を持つ同い年の二人は、歌い方も声も詩風も違うフォーク歌手だけれど、レコードのジャケットを見る限り、その風貌はよく似ていた。
ついでに言うならば、どちらもかつてはかなりの男前であった。




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『バス停に立ち宇宙船を待つ』
友部正人
(ナナロク社・2015年3月1日・一五〇〇円+税)


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魔術的現代詩⑬『エフェメラの夜陰』 [魔術的現代詩]

詩(死)の幻像――、として 



レヴィ=ストロースは、ボロロ族に関する処女論文の中で、とりわけそれ自体は目に見えるものではない社会組織が、どのように目に見える形を与えられるかと云うことに関心を注いだとされる。(*)

エフェメラ――儚い一瞬の時――に魅了された詩人・林美脉子の関心事も、根源的にそれとほぼ同じ位相にあると言ってよいだろう。

語り得ぬものを如何に語るか?
そして何を語るか?

これら二つの主題はそれぞれ独立したテーマとして扱うものではなく、二者択一のツールとして利用されるものではない。




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『エフェメラの夜陰』
林美脉子
(書肆山田・2015年1月15日・二二〇〇円+税)


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魔術的現代詩⑫『森の明るみ』 [魔術的現代詩]

祈りの手法


それにしても詩人の言葉の中には、隠された「祈り」が随所にみられる。
直接的な修辞を避け、あたかも祈る姿を隠すかのように、慎重に言葉を配列する。
これは、自らに課した掟、もしくは儀式であろうか? 
それとも、詩人特有のはにかみであろうか?――





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『森の明るみ』
須永紀子
(思潮社・2014年10月31日・2,200円+税)


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魔術的現代詩⑪『仁王と月』 [魔術的現代詩]

夢想に耽る

月は和紙で出来ている。
松の梢にあり、黄蘗色に発色している。
石は庭の中を廻り、隅鬼は煩悩の中へ入り込む。
そして仁王は、裏庭で桃に袋をつけている。……



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『仁王と月』
浅井眞人
(ふらんす堂・2014年4月4日・2,500円+税)

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